高市政権の誕生は、市場にとって「政策の不確実性」と「方向性の明確化」の両面をもたらす。高市氏は経済成長やデジタル化、エネルギー安全保障への関心が強く、財政出動や規制緩和を重視する姿勢を示す可能性がある。一方で、金融政策の独立性に関する市場の注目が高く、政府のスタンス次第では日銀へのプレッシャーが強まるだろう。為替は金利差と政策期待に敏感であり、国際金利が上昇する局面で日銀が緩和を継続すれば円安が進行しやすい。逆に、物価目標達成に向けて日銀が金融正常化に踏み切るシナリオでは円高圧力がかかる。加えて、エネルギー価格や貿易収支の動向、地政学リスクも円相場に影響を与える。市場は短期的なニュースフローに反応するが、中長期的には財政健全性と成長戦略の整合性がキーファクターとなる。投資家は政策声明、日銀総裁との関係性、財政方針に関する具体策を注視する必要がある。
市場への影響
株式市場
高市政権での成長重視や規制緩和は、特定セクターに追い風となる。輸出関連やテクノロジー、インフラ関連は期待で買われやすい。一方、円安が進めば輸入コスト上昇に弱い小売・素材セクターは圧迫される可能性がある。金融株は金利上昇局面で利ざや改善が期待できるため相対的に強含むだろう。だが、政策の不透明感や国際環境の悪化でボラティリティは高まりやすい。
為替市場
為替は日米金利差が最大の決定要因だ。高市政権が財政拡大を進める一方で日銀が緩和継続なら、国債増発と金利差拡大で円安圧力が強まる。逆に日銀が正常化に動けば円高へ転じる余地がある。短期的には首相発言や閣僚人事、財政方針の細部が材料視され、変動要因となる。市場はヘッジコストやキャリー取引を通じて反応するため、急速な円安進行はボラティリティ急増を招く。
仮想通貨市場
円安や円の信認低下が意識される局面では、暗号資産への投資需要が高まることがある。リスクオンで株高が続けば仮想通貨にも資金流入しやすく、逆に政策リスクで円が急落すると短期的な買いが入りやすい。また、新政権の規制方針やデジタル通貨（中央銀行デジタル通貨＝CBDC）への姿勢が明確化されれば国内取引所や投資家の行動に影響を与える。規制緩和は市場拡大材料、厳格化は逆風となる。
今後の注目材料や展望
注目は①財政政策の具体案（財源・歳出項目）、②日銀との関係性と金融政策の行方、③エネルギー・貿易収支の改善策、④主要閣僚の経済担当者による発言だ。短期では政策発表や補正予算案、日銀総裁の会見が振れ幅を生む。中長期では成長戦略の実行力と財政持続性が評価され、そこから為替・金利・株価のトレンドが形成される。地政学リスクや米国の金利動向も常に相俟って市場を左右する。
まとめ
高市政権下で円安が進むかどうかは、政府の財政スタンスと日銀の対応次第だ。財政拡大と金融緩和が同時に続けば円安圧力は強まり、輸出企業には追い風だが消費者や輸入業者は負担増となる。投資家は政策の「中身」と日銀との協調・対立の度合いを注視し、ボラティリティに備えた分散とヘッジを検討すべきだ。
