2025年11月14日(金)現在、前日13日に米国史上最長となる43日間の政府閉鎖が正式に終了し、金融市場に安堵感が広がっています。10月1日から続いた異例の機能停止は、経済指標の発表停止や連邦職員への給与未払いなど深刻な影響をもたらしました。本記事では、その経緯と株式・為替・債券市場の反応をわかりやすく解説します。
トランプ大統領が11月12日につなぎ予算案に署名したことで、米国史上最長となった政府閉鎖が43日間で終結しました。この間、数百万世帯への食料支援が停止し、連邦職員は1カ月以上給与が支払われない事態に陥っていました。市場では閉鎖終結への期待が高まる中、株価は底堅く推移し、投資家心理は徐々に改善していました。
過去最長43日間の政府閉鎖が正式終結、連邦機関が業務再開へ
米国連邦議会上院は11月10日につなぎ予算案を賛成60票、反対40票で可決し、12日には下院でも可決されました。トランプ大統領は同日に署名し、過去最長となった政府閉鎖は正式に終了しました。予算執行は2026年1月30日まで可能となり、連邦職員は13日から通常業務に復帰する見通しとなりました。
今回の閉鎖は2025年10月1日から始まり、43日間にわたって続きました。これは2018年12月から2019年1月にかけて記録した35日間を大きく上回り、米国史上最長となりました。閉鎖期間中は、補助的栄養支援プログラムの一部停止、航空便の欠航、そして80万人以上の連邦職員が無給での勤務または一時帰休を強いられるなど、社会生活に深刻な影響が出ていました。
与野党の対立が長期化、医療保険補助金延長めぐる攻防
政府閉鎖が長期化した背景には、共和党と民主党の激しい対立がありました。下院では共和党が7週間のクリーンなつなぎ予算案を可決したものの、上院では民主党の大多数が反対し続けました。民主党は、年末に期限切れを迎える医療保険制度改革法(オバマケア)の税額控除延長を閉鎖終結の条件として要求していました。
転機が訪れたのは11月9日で、上院民主党の穏健派議員8名が法案可決に賛成する姿勢に転じたことでした。これにより11月10日に上院でつなぎ予算案が可決され、政府閉鎖終結への道筋が開かれました。ただし、医療保険補助金の延長については今回の予算案には含まれず、共和党は12月第2週までに採決を行うことを約束するにとどまりました。
110億ドルの経済損失と政策判断への影響
43日間の機能停止は、米国経済に110億ドル(約1.7兆円)規模の損失をもたらしたと推計されています。閉鎖期間中は雇用統計をはじめとする重要な経済指標の発表が停止され、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策判断に大きな支障となっていました。特に10月分の雇用統計は欠損となる可能性が高く、経済の実態把握が困難な状況が続いていました。
米議会予算局の分析によれば、政府閉鎖の経済への影響は時間とともに加速度的に悪化します。長期化するほど打ち切られるプログラムが増え、経済全体への悪影響が拡大していきます。連邦政府機関の業務再開には数日から場合によっては1週間以上かかる可能性があり、通常業務の完全な復旧にはさらに時間を要する見込みです。
株式・為替・債券市場が示した反応
株式市場の動向
米国株式市場では、政府閉鎖終結への期待が高まる中で底堅い動きが見られました。11月11日のニューヨーク株式市場では、S&P500種株価指数が前日比14.18ポイント高(+0.21%)の6846.61ポイント、ダウ工業株30種平均は559.33ドル高(+1.18%)の47,927.96ドルで取引を終え、ダウ平均は史上最高値を更新しました。投資家心理の改善を背景に、ディフェンシブ株や景気敏感株に買いが入りました。
12日の取引では、S&P500は前日比4.31ポイント高(+0.06%)の6850.92ポイントと小幅上昇にとどまりました。政府閉鎖終結が近いとの安堵感がある一方で、メタ・プラットフォームズやアルファベットなど大型ハイテク株の一角が売られ、指数の上値を抑える展開となりました。セクター別では、ヘルスケアが堅調に推移した一方、エネルギーやコミュニケーション・サービスが軟調でした。
為替市場の動向
為替市場では、政府閉鎖終結への期待から米ドルに対する安心感が広がりました。ただし、長期化した閉鎖により経済統計の空白期間が生じたことで、FRBの金融政策判断に対する不透明感も残っています。米国経済の実態把握が困難な状況が続く中、為替市場は当面様子見の展開が続くとみられています。
債券・金利の変化
米国債市場では、利下げ期待を背景に長期金利が低下傾向を示していました。政府閉鎖の長期化により経済への下方リスクが高まったことで、FRBによる追加利下げを後押しする要因となっていました。閉鎖終結により不確実性が一つ解消されたものの、経済指標の空白が金利動向に与える影響には引き続き注意が必要です。
原油・金などコモディティの反応
コモディティ市場では、政府閉鎖が需給統計の発表遅延を招いたことで、市場参加者は民間データに頼る状況が続いていました。WTI原油先物は政府閉鎖の影響を織り込みながらも、世界的な需給バランスを反映した動きとなりました。金価格は政治的不確実性の高まりを背景に、安全資産としての需要が根強く推移しました。
暗号資産市場の値動き
暗号資産市場では、伝統的な金融市場の混乱を横目に、リスク資産としての性格を反映した動きとなりました。ビットコインやイーサリアムは、政府閉鎖による直接的な影響は限定的でしたが、投資家心理の変化に応じて値動きに振れが見られました。
FRBの金融政策判断への影響と今後の焦点
政府閉鎖終結により、今後焦点となるのはFRBの金融政策の方向性です。経済統計の発表が再開されれば、FRBは遅れて公表されるデータを精査し、利下げペースの判断材料を得ることになります。市場では、2025年内の追加利下げについて慎重な見方が広がっており、インフレ動向と労働市場の状況を見極める必要があるとの認識が共有されています。
また、今回のつなぎ予算案は2026年1月30日までの予算執行を可能にするものですが、医療保険補助金の延長など積み残された課題も多く、年末にかけて再び政治的な対立が激化するリスクも残されています。投資家は、財政問題の再燃可能性に対して警戒を緩めない姿勢を維持すると見られます。
ミニ用語解説
つなぎ予算(Continuing Resolution):正式な予算案が成立するまでの間、暫定的に政府機関の運営を可能にするための予算措置。通常は数週間から数カ月の期間を設定し、前年度と同水準の予算執行を認めるもので、議会の対立が続く際に政府閉鎖を回避するための手段として用いられます。
政府閉鎖(Government Shutdown):連邦議会で予算案が期限までに成立しない場合に発生する事態。必要不可欠な業務(essential services)を除き、連邦政府機関の活動が停止され、職員の大部分が一時帰休となります。過去には数日から数週間の閉鎖が複数回発生しており、今回の43日間は史上最長記録となりました。
参考・出典
※本記事は情報提供を目的としており、特定の投資行動を推奨するものではありません。
価格や指標は2025年11月14日(金)時点の情報に基づいています。
